循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


会社について
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会社について

 私は政治についてのお話の中で、一番初めにするべきことは個人主義のアメリカ型“競争社会”と協調主義の北欧型“福祉社会”のどちらを選ぶのかを明らかにすることとしました。

 これは優秀な小泉首相が2005年の選挙での郵政民営化への国民の支持を、“競争社会”での政府の形である“小さな政府”全体への国民の支持と読み替えることで、曖昧にしたままに政治の方向性を個人主義のアメリカ型“競争社会”に向けたがために、その後の政治が従来の協調型との間で右往左往したことが政治の混迷の原因だと思えたからです。

 それと似たことは会社でも起こっているのです。
 従来の終身雇用制、年功序列制などの家族経営的な会社はある意味、政治においての協調主義の北欧型“福祉社会”にあたりました。

日産のカルロス・ゴーンさんは2000年前後危機的状況にある日産を職員をリストラすることなどで立て直しました。当時はまだ社会にリストラした職員を受け入れる余裕のある時期でしたから成功したのであって、失業者の多い中でのリストラは景気をより悪化させることで自社の立て直しにもつながらないことがありえます。あくまで周りの状況と時機を適切に見てのタイミングが重要であったにも関わらず、“大きな会社もリストラで立て直せた”という結果によって、日本の会社を従来のリストラを極力避けようとしてきた家族経営的なものから、リストラをより気軽にできる“競争主義”へと体質を変えたといえます。現実に新聞に見るリストラ件数は増加しているようですし、非正規の社員の割合を増やしていることも将来のリストラへ移行しやすいように準備しているともいえます。

 現在の社会に世界を股にかけたグローバルな企業というのは何社もありますし、日本にもその規模の会社はあります。では国を超えた規模の会社に政府の代わりができるのでしょうか?・・・それは無理で、会社と政府は当たり前ですが別物です。
 儲けることを基本的に目的としている会社にとって、少なくとも自分の会社に属さない人たちの面倒を見る必要はありませんし、自分たちの会社に属している人たちにかかる経費も儲けを中心とする会社にとっては必要最低限のほうがよいからです。

 元々会社とは株主などの出資者に対して収益を上げることで利益を返すことを目的にできているものですが、従来の日本の会社はそれに加えて働いている社員の幸福も目的にしていたといえます(“福祉型”会社と呼ぶことにします)。その後者の目的をなくした会社(“競争型”会社と呼ぶことにします)にとっては、人件費は支出の大きな部分を占めるのですからロボット化や人件費の安い海外への進出によって国内の社員を減らすほうが収益があがるのは当たり前で、今の従業員をできるだけ減らそうとする流れはさらに加速がついてもおかしくはないと言えます。新規雇用の抑制は簡単ですし、日本にはまだ他人の気持ちを思い遣る人が多いのでそこまでは行っていませんが、“会社が生き残ることを目的とした人員削減”から“会社がより儲けることを目的とした人員削減”へと移行することを、非正規雇用は解雇をしやすくすることによって法的に可能にします。

 政治の側から見れば“福祉社会”を目指す政府にとって“福祉型”会社は同じ方向性を持っているという意味で、自分たちの仕事の一部を担ってくれていたと言えます。でもその政府にとって“競争型”会社は失業率を増やし、税収も減らすのに、生活保護などの社会保障費を増やさせることもあるのですから、逆の方向を向くかもしれないと言えます。

 ましてや政府が“競争型”社会を目指した場合、“福祉型”会社の方はまだましですが、“競争型”会社ではあなたに本当の実力がある場合を除いて、あなたを守ってくれるものは何もなくなってしまいます。

 政治のところに書きましたが、“衣食足りて礼節を知る”と”恒産なくして恒心なし”は政治を考える上で重要な考え方だと私は思っています。
 その一例に1980年代の成長期の日本を見てのマレーシアが以後の方針としたルックイースト政策(アジアを見直そうでしょうか)では終身雇用制が2つの重要項目のひとつとして高く評価されていました。

 現在の日本が世界から評価されている項目の中の一つである安全な社会というのは、会社自体にとっても、“競争型”会社に働く人たちにとっても幸せなことではないでしょうか。会社が何を目指すかは各会社の自由だと思いますが、たとえば“福祉型”会社と“競争型”会社の社会への貢献度に違いがあることは認識していてもらいたいし、とくに大会社ほど会社のレベルだけではなく、日本にとってどういう影響があるか、世界にとってどういう影響があるかにもひと時思いを馳せていただければと思います。

 ここで伝えたかったことは、会社が従来のように会社とあなたたちがともに幸せになろうとする方向から、会社が幸せになることを主に考えるように変わってきたかもしれない。そのときにあなたを守るものは何だろうか?・・・政治まで“競争型”のものを選んでも良いのですか?ということなのです。

                   ”あなたは今の政治に安心できますか?”
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