循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


TPPと弁護士問題
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      TPPと弁護士問題・・・訴訟が増えませんか?

 1992年アメリカで79歳の方が車中で膝にはさんだコーヒーの蓋を開けようとしてやけどをした件で、裁判でマクドナルドに80%の過失があるとしてそれへの賠償額1600万円と加害者への非難としての懲罰的損害賠償額として27000万円の合わせて約3億円を支払うようにとした判決がでました。最終的に支払額は約6000万円だったようですが、あなたは何かおかしいって感じませんか? そうそう、そういう賠償金を払うための保険としてコーヒーの値段もそれなりには高くなっているはずです。

 日本は人口12000万人で2011年で弁護士は30447人で、いろいろなケースがあるようですが初めに払う着手金以外の成功報酬は1520%だそうです。一方アメリカでは人口31000万人に対して、さすが訴訟大国?だけあって弁護士は100万人以上で完全成功報酬で30-50%が多いそうです。例えば製品によって何か損害を受けた場合のPL法(製造物責任法)関連の訴訟件数は日本では50年間で約150件でしたが、アメリカでは19851年間で13554件あり増加しているそうです。民事訴訟件数でも1997年アメリカの約1800万件に対して日本は約42万件です。もしかしたらここにも“競争社会”と“福祉社会”の違いが現れているのかもしれません。訴訟が多いから弁護士が増えるのかもしれませんが、増えた弁護士にとっても収入を得るため訴訟が増えたほうがありがたいのかもしれません。

 TPPでアメリカ人の弁護士が日本で働くことが可能になるかもしれないそうです。
日本には懲罰的損害賠償はありませんから、これほどの高額にはならないかもしれませんが、耳元で6000万儲かるかもしれませんよって言われたらあなたは心動きませんか?
 でも逆にあなたは訴えられるかもしれないのです。

 アメリカでは大企業の幹部も賠償保険に入っているそうですし、巨額の保険金を払えなくて倒産する会社もあるそうです。私には日本の法整備や、訴訟への予防としての対応がどのレベルにあるのかを知りませんが、輸出をしている企業を除いて、現時点で訴訟がほとんどない日本の中小企業の人たちが十分な対応ができているのか不安を持っています。

 また競争社会を目指した場合は、自然と勝者が住みやすい世の中になると思われます。でも福祉社会でのできるだけ多くの人たちの幸せを願う政治家にとっては、それがどれほど遠くであろうと、その夢の可能性を示しつつ、できるだけ多くの人たちが同じ方向を向いて歩んでいけるような目標を示すことが大切なのだと私は思っています。競争社会の勝者と敗者はそれでも同じ方向を向いています。でも訴訟の勝者と敗者は全く反対を向いています。それは全体がより良い世の中へ向かおうとした場合に邪魔になるのではないでしょうか。

1.訴訟が増えれば、その報酬、保険として円が海外へ流れていくかもしれません。日本には現金など動かしやすい形での個人金融資産が多く、現在その総額は政府の借金とほぼ同額に近いので、それが減ることは円の暴落につながる危険があるのかもしれません。

2.現在全く安定している日本の中小企業が、訴訟を受けることによりいろいろな形での苦境に立たされるかもしれません。また訴訟対策の保険負担が増えるかもしれません。

3.訴訟が増えれば、陪審員も大変だし、社会がギスギスしたものになるかもしれません。 

4.訴訟で生まれる勝者と敗者の関係は、全体がより良い世の中に向けて共に歩んでいこうとした場合に、それを難しくするかもしれません。

 だから私はこの点でもTPPには反対です。

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