循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


風邪のお話
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         風邪のお話

 私は医者ですが、開業するさい病気で休むのはまずいので風邪の予防には十分注意をしました。結果開業後この14年で高熱は年末年始のインフルエンザの2+αぐらいです。せっかくのお休みに病気とは“病は気から”が出ているのかもしれませんが、それなりに予防が有効であったと思われるので、医学的というよりあくまで私見ですが書きます。

1.風邪の予防は?  ・・・・マスク、手洗い、うがい

 よく風邪を引いてダウン気味になっていた勤務医のときと変えたのは、予防ではマスク、手洗い、うがいの3つだけです。マスクといっても外来でしか使っていません。ただしインフルエンザの可能性のある患者さんではマスクをしていても話や診察のとき必ず私のほうを向かないようにしていただきました。これはインフルエンザを含む風邪の多くは飛沫感染といって、くしゃみや咳、痰などを介してうつることが多いので、患者さんが飛ばしたとしても、私にかからないようにしていたのです。家庭内で風邪の方がおられたら少し頭に置いていても良いことかもしれません。有名になった下痢をおこすノロウイルスなどは便を介してうつりますので、吐き下しの風邪では手洗いは絶対に必要です。

 手洗い、うがいは各勤務終了後は必ずですが、やばい?と思う患者さんを診たあとはすぐに励行していました。せっけんは普段は市販のポンプ式のもので特殊なものではありませんでした。

2.うがいは?

 うがいをする回数は上に書いたように多いかもしれませんが、普段は適当なゴロゴロぐらいです。でも何かのどに違和感があるときは、のどの奥まで洗うようなイメージで、“あっ汚れがオエっと出た!”という感じまでしています。

 テレビで“うがいは左右斜め45度で少し上を向いてしたほうが有効”“唄を歌いながらうがいするほうが有効”としていました。実際にためしてみましたが正面を向いてガラガラするよりも、あごを少し斜めへあげてうがいするほうが効く(水がのどの奥へ到達する)ような気がします。唄を歌いながらすると振動数が変わるので良いのだそうで・・・(きっとのどの形の変化で水が入るのだと思います)これも良さそうな気がします。例えば全く変な意味はありませんが、君が代の“があ”でのどが開いて水が入るイメージがあります。

 それと私は以前からうがい水の量をものすごく少量(カラカラぐらい)でするのと、普通に口に含んでする両方をしていました。少量の場合、水しぶきがあちこちして奥まで到達するような感じで・・・“オエッ”となって痰がきれいにでてくるイメージがあります。汚い表現で失礼です。というわけで私は、“ちょっと歌いながら、顔を左右にふりながら、普通量の水と、ごく少量の水で、ガラガラして“オエッ”っとなって泣いています。

3.もしかして風邪を引いたかなと思ったら・・・これ有効かもしれません

 転寝をして、あれっのどが少し変だな・・・なんて感じたことはありませんでしょうか?

 私も開業当初はたくさんの患者さんに来てもらうためにも、漢方薬の勉強をしました。ある講師の先生は講演会で“私はおかしいと思ったらすぐに葛根湯を2袋飲んで、汗をかいたら着替えをして終わる”とのことでした。もう一人の先生は“私は1袋飲んで30分して汗が出なければ、もう1袋追加して終わる”とのことで偶々どちらもツムラの講演会でしたのでツムラNo1でした。経験談でしたので私もこの14年“おかしいと思ったらすぐにツムラNo1を1袋飲む”ようにしていますが、正直風邪をひくことがほとんどありません。漢方の世界では風邪を“ふう(風)じゃ(邪)”と考えて、葛根湯を飲むとわかるのですが血流が良くなるのかポカポカしてきます。それで汗とともに“ふうじゃ”を追い出すイメージのようです。“カコナール”など市販のものにも葛根湯があるようですので、これはお勧めです。

4.ではどういう時に医者へ行けばいいの?・・・痰に色がついているときなど

 まず葛根湯はあくまで風邪の引き始めに使うと思っています。ダラダラ使ってもダメのようです。ちなみに今までは1回でOKです。1-2回使ってダメなら私は西洋薬を使います。そのときに市販の風邪薬を一度使ってみても良いかもしれません。

 それらの薬を数日使っても良くならないときや、元々に心臓や肺の病気を持っているとき、インフルエンザでは48時間以内の治療開始が必要ですので高熱のとき(インフルエンザのお話を見てください)、それと痰に色がついている時は医者へ行くことをお勧めします。

5.痰のお話

 痰の色と量は病気を考えたり治療の効き目を診るのに非常に有効ですので、汚いかもしれませんがティッシュを少しあけて色をみてポイしてください。

少し大雑把な書き方ですみませんが、ウイルスによる風邪での痰は基本的に白か透明です。痰に色がついていたらばい菌が悪さをしている可能性が高く、ばい菌を殺す抗生剤が必要になります。現在薬局では抗生剤を全く売っていませんので、痰に色がついていたら医院へ行くことをお勧めしているわけです。また全てのばい菌を殺す抗生剤はありません。痰の色によってばい菌の種類が予想される場合があり、それによってどの抗生剤を選ぶかの参考になります。

 もしも抗生剤が当たっていてばい菌が死んでいけば、痰の色はきれいになっていきます。また痰の量は初めは出やすくなって一時増えるかもしれませんが、だんだん減り、さらになくなります。ですから痰の色と量は、熱が下がるかと同じように治療がうまくいっているかの目安になってくれます。

6.お風呂は?・・・答えはまだないかも

漢方の先生は講演会で風邪のときは入浴は絶対ダメとのことでした。アメリカでは風邪でも入るようですが、あちらは湯船ではなくシャワーが主体です。フランスでは入るという話を聞いたことがあります。ということで単に私の認識不足かもしれませんが、誰かか答えを探す努力をしてくれればありがたいとは思っています。ただし外来で診ていると、寒さの続いているときよりも、急に冷え込んだときに風邪を引いた患者さんが増える印象があり、勝手に温度の変化が影響しているのではないかと思っています。日本の家屋では外国に比べて浴室の外が寒いことが多く、せっかく入浴してもかえって悪さをするのかもしれません。正解のない間は大切な用事が控えているときは入浴をしないほうが無難かもしれないと思います。また急な温度変化には注意が望ましいのかもしれません。

 ついでに汗は体温を下げるために体が反応としてかいていますが、濡れた下着をそのままにしていると今度は温度が奪われることになります。暖かい部屋に入ったら一枚脱いだり、濡れた下着は早めに替えるなど汗への対処は大切ではないかと考えています。

7.その他

 “風邪は万病のもと”ということわざがあったかと思いますが、昔よりもいろいろな対応する手段ができた今でも痛い目に会うことがあります。

 特に元々に喘息など何らかの肺の病気を持っている方は、健常な方に比べて余力がありませんので、こじらせると大変ですから早期に治療を受けることをお勧めします。

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