循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


ニトロペンのお話
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               ニトロペンのお話

 ニトロペンは、心臓の筋肉に血液を送る血管(冠状動脈)を拡げる力が強いので、狭心症や死亡率の高い心筋梗塞の発作時の“お助け薬”として非常に大切な薬です。

 (狭心症のお話心筋梗塞のお話をご参照ください)

1.ニトロペンの必要性

狭心症の発作のときに命に関わる不整脈がでることがよくあり、これが突然死につながります。またニトロペンでほんのわずかでも血液の流れを確保できれば血栓ができにくくなり、心筋梗塞になることを防げる可能性が高いのです。さらに発作が2時間以上続くと心臓の筋肉は腐り始め、6時間で血管の詰まった先は腐りきってしまうと考えられていますので、とにかく対応としては詰ったところの血液の流れをできるだけ早く取り戻すことが最重要です。そのためには冠状動脈を拡げるニトログリセリンをすぐになめることです。6時間以内でもどんどん腐る場所が拡がるのですから、時間の勝負だと思ってください。

2.ニトログリセリンのなめ方

 発作があったときにすぐに舌の下へ押し付けるように入れて、舌先を使って溶かすようにしてください。飲み込んではいけません。

 このときの注意点は、立って舌下していけません。横になってなめるか、背がもたせられるようなかっこうで下に座ってなめるかしてください。理由はニトロペンは血管を拡げますので血圧が下がりふらつくことがあるからです。ただしニトロペンの効果自体は15分で消えますのでふらついても、横になるか足を上げて横になっていれば普通は大丈夫です。 

 1錠舌下しても症状がよくならない場合、5分後にもう1錠舌下して救急受診を考えてください。

3.副作用は?

 前述の元々の効果に基づく血圧低下ですが対応は書きました。

 その他、頭の血管が拡がった時に頭痛を感じる方がいますが、これはニトロペンが効いているということですので、症状のあるときは必ず舌下して、その後の対応については後日主治医の先生とご相談下さい。

 

 なお私は狭心症ではありませんが、初回の発作で心筋梗塞になる方が50%弱ありますので、外出中に胸痛の方に出くわす可能性も考えてニトログリセリンを常に携行しています。それほど大切な薬だと思ってもらえるとありがたいことです。

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