循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


抗生剤などの薬の・・・お話
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           抗生剤などの・・・お話

1.抗生剤とは

 抗生剤とはばい菌を殺す薬で、風邪の原因であるウイルスには効きませんので、通常の風邪で使うことはありません。しかしウイルスによる風邪をこじらせて、ばい菌が悪さをしてくる場合があります。高齢者や幼児、元々心臓や肺に病気があるなど健常者と違ってこじらせた場合に余力のない人では、ばい菌が悪さをしないように初めから予防的に抗生剤を使う場合があります。ただし予防的に使いすぎるとばい菌が後に書く耐性を持つ可能性がありますので注意が必要です。

 また風邪のところに書きましたが、私は痰に色がついている場合はばい菌がからんでいる可能性を考えて抗生剤を使用します。

2.薬の飲み方は?・・・抗生剤は飲み忘れず、決められた期間飲み切ることが重要

 ばい菌の種類はいっぱいあり、全てのばい菌を殺すような抗生剤はありませんので、その原因となっているばい菌に効く(適応ある)抗生剤を選ぶことがまず重要です。

 一般に飲み薬はまずお腹で吸収されて血液の中に入り、ばい菌のいる目的の場所へ行って働きます。ばい菌が死ぬにはそれなりの時間が必要ですので特殊に作られた薬を除いては1回飲んだだけで効くことはありません。またせっかく適応のある有効な抗生剤でも飲み忘れると薬の濃度が下がったときに、ばい菌が復活してこのとき抗生剤への抵抗力(耐性)を持ってしまい薬の効かないより強力なばい菌へと変化してしまいますので、抗生剤の飲み忘れはいけません。私の子供時代は薬の濃度が下がらないように抗生剤を6時間毎で飲むことも多かったのです。現在は血の中で長く持続するように改良されてきていますが、持続時間は個々の薬で異なります。また症状が良くなったからと抗生剤を早めに中止した場合、まだばい菌が残っていれば増えなおした数日後にぶり返すことがあります。ばい菌を殺すにはそれなりの時間が必要ですので決められた期間飲みきることが必要です。

基本的には指示通りの飲み方をすれば全く問題はないのですが、その重要性にはいろいろな場合があります。例えば抗がん剤なども抗生剤と同じく適当に飲んでは患者さんが損をすることが特に多いと思われる薬です。“もしも日曜日寝過ごして昼ごろ目が覚めたとき薬をどうしたらよいですか?”という質問をしてみればこの答えがわかるかもしれません。

3.抗生剤をいつまで飲むの?

 薬を飲む期間は症状の強さで決めていますが、しっかりと約4日間飲んでも全く改善の兆しがない場合は、元々薬がそのばい菌に対して有効でなかった可能性を考えて抗生剤を変更したりします。2回目の抗生剤ではしっかり熱を測ったりと良くなったことを確認するようにしています。

 結核、蓄膿症、爪白癬など特殊な病気では抗生剤の内服期間は非常に長くなります。例えば爪の裏側に水虫がついた爪白癬では根元から生えてきた新しい爪に全てが入れ替わるまでの数ヶ月きちんと飲み続けないとダメです。パンに生えたカビは一日で広がりますよね。たとえ2ヶ月飲んでもう一歩までいっても薬を1日飲み忘れれば、すぐに爪の裏を水虫が覆いつくしてしまい、それまでの2ヶ月の内服は全くの無駄になりますのでご注意を!

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