循環器内科開業医の病気、世の中、生きる悩みについての独り言です


心筋梗塞のお話
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心筋梗塞のお話

1.心筋梗塞とは    ・・・

 心筋梗塞とは、心臓の筋肉に血を送る3本の血管(冠状動脈)のどこかが長い時間詰まったためにその先の筋肉が腐る(壊死といいます)病気です。30年前は家で発症した場合の死亡率が40%、病院へたどり着けた場合の死亡率が20%でしたが、今は治療の進歩により病院では5-10%まで低下しています。しかし救急体制が進んでも病院へたどりつけない人がいるのは事実ですので、心筋梗塞は今尚恐い病気として予防、狭心症の段階での早期発見、早期の対処が重要です。(狭心症のお話もご参照下さい)

2.心筋梗塞と狭心症の違い  ・・・違いは発作の持続時間です

 心臓の筋肉に血液がいかない(虚血)のが発作であり、それは2つの病気で同じです。違いは虚血の持続時間だけです。狭心症のお話に書きましたが、まとめると

   発作の持続時間  心臓の筋肉は   後遺症を

 狭心症      短い      腐らない     残さない

 心筋梗塞     長い      腐る       残す    死亡率が高い

ですので、狭心症を早期に見つけることで心筋梗塞にならないようにすることが重要です。

3.心筋梗塞の急性期の問題点は  ・・・心不全と不整脈:一刻も早く病院へ!

1)心不全とは?・・・心臓は体に血を送るポンプで、車で言うとエンジンに当たります。虚血の場所や腐った場所は動かなくなるために、その場所が広いほど心臓のポンプとしての力が低下します。ポンプの力が不足して出てくるのが心不全で,息切れ,呼吸困難などの症状がでます。例えば外車のエンジンだけが3000ccから500ccまで落ちたら、大きな車体を動かせなくなるのと同じです。これを調べるには心臓超音波検査などが役に立ちます。この壊死の大きさは詰った場所が大きな冠状動脈の根元ほど、詰った時間が長いほど大きくなります。発作が2時間以上続くと心臓の筋肉は腐り始め、6時間で血管の詰まった先は腐りきってしまうと考えられていますので、対応としては詰ったところの血液の流れをできるだけ早く取り戻すことが最重要です。そのためには冠状動脈を拡げるニトログリセリンをすぐなめること。それでも発作が続けばすぐに救急車で救急病院へ行くことが重要です。6時間以内でもどんどん腐る場所が拡がるのですから、さらに時間の勝負だと思ってください。不整脈とあわせ病院へ早くに行くことが絶対にお得です。

2)不整脈とは?・・・特に急性期に虚血の場所から命に関わる不整脈がでることがよくあります。また不幸なことにせっかく血液が流れ出したときに危険な不整脈がでることが多いのです。病院へたどり着けずに突然亡くなられる場合の原因の大きな要素です。これに対応できるようにするためにも一刻も速く医療機関へたどりつくことが重要なのです。

 もしも目の前で“胸が痛い”と言って意識を失った人がいれば、心肺蘇生法を知っているのがベストですが、まず誰かに119番をしてもらって、昔の人工呼吸をするだけでも何もしないよりは遥かにマシです。そしてこの状況では最近あちこちに設置されているAEDという機械での電気ショックが特に有効です。

 “あなたは、あなたの愛する人を救えますか?”ということです。心肺蘇生の講習会は今あちこちで行われていますので、一度見るだけでもあなたは大きく変わることができます。

4.発作がニトログリセリンを舌下しても治まらず心筋梗塞かと思ったら・・すぐ救急車!

   忘れないで下さい。

5.心筋梗塞を乗り越えられた方に  ・・・主治医の先生の説明を良く聞いて下さい。

1)心不全は?・・・今回の心筋梗塞の壊死した大きさはどうかによって決まります。

2)不整脈は?・・・慢性期に壊死した場所から不整脈が出てくることがありますが、これは心筋梗塞が小さい範囲でもおこりえます。これを調べるには24時間心電図です。

最も大切なことは、冠状動脈は3本だけで2回目の心筋梗塞の死亡率は高くなりますので次の心筋梗塞を起こさないことです。

3)狭心症は?・・退院時に発作を起こすところが尚残っているかの正確な評価と対応

4)今後の狭心症は?・・・安静型狭心症の原因であるスパズムが考えられるなら予防に著効を示す薬を絶対に飲み忘れないことが大切で、動脈硬化によって冠状動脈が狭くなっていたことが原因であれば、今後さらに狭い箇所を作らないように肥満、タバコ、運動不足、高血圧,糖尿病,高尿酸血症、高脂血症(コレステロール)などの労作型狭心症の原因でもある動脈硬化を進める病気(生活習慣病))を確認してコントロールすることが重要です。

狭心症のお話にも書きましたが狭心症のない私でもニトログリセリンを常に携行しているのですから、少なくともニトログリセリンを常に携行することとお薬をしっかりと飲むことを忘れないようにしてください。

6.最後に

 死亡率の高い大変な病気を乗り越えられたのですから,正しい日常生活のコントロール、治療を受けて再梗塞を予防していきましょう。

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