狭心症のお話
狭心症とは、心臓の筋肉に血液を送る3本の血管(冠状動脈)のどこかの流れが悪くなったために“胸の痛みや締め付けなど”(狭心症発作)を感じる病気で、発作としては死亡率の高い心筋梗塞(心筋梗塞のお話参照)と同じですので恐ろしい病気です。簡単にお話を聞くだけでかなり診断がつくので、このお話を読んでおくのは役に立つかと思われます。
1.狭心症とは ・・・心筋梗塞との違いは発作の持続時間です。
指に輪ゴムをしっかり巻いたことを考えてください。色は変わり痛くなってきますが、早めにはずすと元通りです。しかし巻いたままにしたら指は腐っちゃいます(壊死と言います)よね。同じように一般に狭心症発作は15分以内ですが、これが2時間以上続くと心臓の筋肉は腐り始め、6時間で血管の詰まった先は腐りきってしまうと考えられています。ですから早い対処が必要なのです。
2.狭心症の症状は? ・・・いろいろです。
一般には“胸の痛みや締め付けなど”が多いですが、左手がだるくなる、あごにグーッとくる(この訴えは本物であることが多い印象です)、のどに焼け火箸を突っ込まれたみたいなど、人によって感じ方はいろいろですが、その人にとっての発作の感じ方は同じです。ただし症状を感じない方が糖尿病の方に多いのですが約1割おられます。
3.狭心症には安静型と労作型の全く違う2種類があります・・・話でほぼわかります。
4.安静型狭心症について ・・・起こる時間帯がポイントです。
スパズムと呼ぶ冠状動脈の縮み上がり(れん縮)が原因です。深夜から朝方の約10分以内(短いと1,2分)の痛みの発作が症状です。診断は話でほぼ予想がつき、24時間心電図や心臓カテーテル検査での誘発で確定します。治療は予防の薬が著効しますし、発作時ニトログリセリンが著効します。予防の薬は非常に良く効きますので、逆に飲み忘れで発作が夕方などおかしな時間に起こることがあるぐらいですから飲み忘れは危険です。
5.労作型狭心症について ・・・何をしていて起こるかという状況がポイントです。
動脈硬化(水道管のミズアカみたい)で冠状動脈が狭くなるのが原因です。何か体を使った仕事をしていて起こり、休むと15分以内によくなるので基本的には日中です。 仕事の強さ(脈拍の増え方がポイント)に比例するので、ある脈拍になると繰り返し必ず発作が起こります。例えば階段1階昇ると発作の起こる人では、同じ1階を昇ると繰り返し発作が起こります。またこの発作の起こる脈拍のレベルは血管の狭さに比例するので、血管が狭いほど軽い仕事で発作を起こします。例えば冠状動脈が詰まりかけの人では食事をするだけで繰り返し発作がおこります。診断は運動負荷心電図(脈拍を増やし発作を起こします)でつけて、心臓カテーテル検査などでその重症度を決め、治療方針を立てます。治療には薬、カテーテルでの治療、バイパス手術がありますが、どれが良いかの治療方針は“どこがどれだけ狭いのか”を教えてくれる心臓カテーテル検査で決まります。
6.狭心症への対応は ・・・心筋梗塞にならないように早期発見、早期治療が大切
まとめると 発作の持続時間 心臓の筋肉は 後遺症を
狭心症 短い 腐らない 残さない
心筋梗塞 長い 腐る 残す 死亡率が高い
ですので、狭心症を早期に見つけることで心筋梗塞にならないようにすることが重要です。
心筋梗塞の急性期の患者さんに詰った冠状動脈の根元から血栓を溶かす薬を流すと約90%で血流が再開しますので、最後のふたをしているのは血栓と思われます。ニトログリセリンは冠状動脈を拡げる薬です。流れのある場所には基本的に血栓はできませんので、発作の早期に少しでも血管を拡げて血の流れをチョロチョロでも確保しておくことは重要です。
ですから上記を読んで、症状から少しでも狭心症の可能性のある人は早めに循環器科を受診すること。狭心症の診断のついている人は薬を飲み忘れないこと。心筋梗塞にならないようにそれでも発作が起これば少しでも早くニトログリセリンを舌下すること。心筋梗塞になっても壊死の大きさを少しでも減らすように発作が続けばすぐに救急病院へ行くことが重要です。また予防としては肥満、タバコ、運動不足、高血圧,糖尿病,高尿酸血症、高脂血症(コレステロール)などの労作型狭心症の原因でもある動脈硬化を進める病気を検診などで早期に発見しコントロールすることをお勧めいたします。
なお私は狭心症ではありませんが、初回の発作で心筋梗塞になる方が50%弱ありますので、外出中に胸痛の方に出くわす可能性も考えてニトログリセリンを常に携行しています。それほど大切な薬だと思ってもらえるとありがたいことです。